アメリカの宗教は何が多い?多文化社会において気を付けたいこと

アメリカには様々な人種が住んでいますが、どのような宗教を信仰しているのでしょうか?
日本ではあまり宗教的な話が取り上げられることはありませんが、アメリカでは信仰はごく身近な話題です。

今回はアメリカの宗教をテーマに、

  • ・アメリカの人はどんな宗教を信仰しているのか
  • ・宗教と社会との距離
  • ・これから渡米する人が気を付けた方がいいポイント

についてご紹介します。

1.【2024年最新】アメリカの宗教割合ランキング

1位:プロテスタント 40%
2位:無宗教 29%
3位:カトリック 19%
4位:その他宗教・その他キリスト教 12%
  モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会) 2%
  ユダヤ教 1.7%
  イスラム教 1.2%
  仏教 1.1%
  正教会 1%
  ヒンドゥー教 0.9% など

※出展:Pew Research Center「2023-24 Religious Landscape Study(Religious identity in the United States)」  

キリスト教がアメリカ社会の基盤であることに変わりはありませんが、近年その割合は減少傾向にあり、代わって無宗教層が増加しています。 2023~2024年に行われた調査によると、プロテスタントやカトリックなどを含むキリスト教徒の割合は、成人人口の約62%でした。2007年のキリスト教徒は全体の78%、2014年は71%であったことと比較すると、減少幅の大きさがわかるでしょう。

無宗教者が増えた最大の要因は、宗教を持って育った人が成人後に「無宗教」へ移るケースが多いことです。無宗教で育った人が13%なのに対し、宗教で育ちながら現在は無宗教という人が20%に達しており、特にキリスト教からの離脱が目立ちます。

2.アメリカは信仰の自由と政教分離が基本理念にある

アメリカは信仰の自由と政教分離が基本理念にある

アメリカの宗教=キリスト教というイメージがあるかもしれませんが、実はアメリカには国教は定められていません。

1786年1月16日に成立したバージニア信教自由法では、

  • ・何人も宗教儀礼に献金したり、足繁く教会に通ったりすることを強制されない
  • ・すべての人は、いかなる形であれ、どの人の市民的権利に影響を当てることなく、宗教問題について、信念を表明し、議論する自由を有する

と明記されています。

参考:バージニア信教自由法 – Wikipedia
権利章典 – 宗教の自由の根源 |About THE USA|アメリカンセンターJAPAN

市民が自由な信仰を持つこと、またそれを守るための政教分離はアメリカの重要な基本理念です。
これは、アメリカを開拓したヨーロッパ系移民が様々な宗派を信じていたこと、イギリス植民地時代に英国協会による激しい差別を受けたことなどが影響してます。

3.アメリカの宗教の割合

2023~2024年にピュー・リサーチ・センターが行った全国世論参考調査(NPORS)によると、回答者の62%が自らをクリスチャンと回答しました。
アメリカの宗教の割合
画像引用元:Pew Research Center「2023-24 Religious Landscape Study(Religious identity in the United States)」

その他の宗教を信じていると答えた人は全体の数パーセントで、無神論者あるいは無宗教者と答えた人は29%という結果になりました。

3-1.キリスト教徒が全体の6割以上を占める

自分はキリスト教徒であると答えた人は62%で、

  • ・プロテスタント40%
  • ・カトリック19%
  • ・モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)2%
  • ・正教会1%
  • ・エホバの証人:1%未満
  • ・その他キリスト教1%

という割合でした。

3-2.ユダヤ教・イスラム教・仏教の信者は少ない

前述の調査では、キリスト教以外の宗教を信仰していると答えた人は全体の7%にとどまりました。
内訳は以下の通りです。

  • ・ユダヤ教1.7%
  • ・イスラム教1.2%
  • ・仏教1.1%
  • ・ヒンドゥ教0.9%

今後移民の増加などで、今後これらの宗教の信者がアメリカ国内で増加すると予想されています。

3-2-1.ユダヤ教

ユダヤ教徒は全米では少数派ですが、州によって偏りがあり、ニューヨーク州が6%、フロリダ州が3%と突出して多い傾向があります。過去にアメリカへ移り住んだユダヤ教徒が大都市に集まり、礼拝施設や学校などを中心にコミュニティを維持してきたためです。

ユダヤ教は、少数でも政治的影響が大きい点も特徴です。親イスラエルの立場で政策提言や働きかけを行う団体・支援者のネットワーク「親イスラエル・ロビー」があり、投票や献金など政治参加が活発なので、外交政策の議論では政策に関わる場で存在感を持ちやすい状況にあります。

また、キリスト教はユダヤ教の聖典(旧約聖書)を共有しているため、両者をまとめて「ユダヤ・キリスト教」と呼ぶ考え方も広まっています。

3-2-2.イスラム教

イスラム教も全米では1.2%と少数派ですが、ニューヨーク州は3%と多いのが特徴です。移民だけでなく改宗も背景にあり、アフリカ系アメリカ人が教徒の一定割合を占め、黒人のイスラム教徒の約半数が改宗者とされます。モハメド・アリなど著名人の改宗も知られています。

一方で、社会的な摩擦も問題になっています。これは、9.11以降、イスラム過激派によるテロが世界中で発生したことが背景にあります。テロと安全保障の話題がセットで語られることが多く、一部で「イスラム教徒全体が危険」という見方が広まり、結果として偏見やヘイト犯罪に繋がりました。

3-2-3.仏教

アメリカの仏教は、アジア系移民を中心に信仰が広がってきました。歴史的には、1853年にサンフランシスコで最初の仏教寺院が建てられたとされ、移民が暮らしを築く過程で礼拝や集まりの場として寺院が地域に根付いていった背景があります。

寺院は信仰の場にとどまらず、同郷の人同士がつながる拠点としても機能しやすく、コミュニティの維持に役立ってきました。近年は移民コミュニティに限らず、瞑想や精神性への関心から仏教に関心を持つ人も増えており、ハリウッド俳優のリチャード・ギアなど著名人の改宗が話題になったことをきっかけに一般層でも仏教が注目されるようになりました。

3-3.無神論者・無宗教者

無神論者、無宗教者であると答えた人は全体の29%でした。

特に若年層で特定の宗教に属さないことを選ぶ人が増えており、今後も無神論者、無宗教者の割合は増加すると予測されます。

3-3-1.無宗教者の増加傾向

アメリカでは「特定の宗教に所属しない人」が長期的に増えています。2007年は16%でしたが、2014年に23%へ上がり、2023-24年の調査では29%に達しました。増加は一時的なブームではなく、十数年単位で続いてきた変化です。年齢が若い層ほど無宗教の割合が高い傾向があり、世代が若いほど「宗教に所属しない」という選択が一般的になっている状況にあります。

3-3-2.無宗教者の内訳

無宗教といっても、「信仰がない」と同義ではなく、「特定の宗教団体・宗派に所属しない」という意味でも使われます。無宗教者の内訳は、「無神論者」が17%、「不可知論者」が20%、「特に立場を取らない人」が63%です。

大多数の「特に立場を取らない人」の63%は、「神の存在を否定する」というより、「所属先を名乗らない」と理解したほうが分かりやすいでしょう。実際、無宗教の多くは神または高次の存在を信じており、霊的な力は存在しないと考える人は29%にとどまります。

3-3-3.増加の背景

無宗教である理由としては、「宗教の教えに疑問がある」「神を信じない」という回答が大きな比重を占めます。加えて、「宗教団体が嫌い」と感じる人が一定数おり、宗教者との悪い経験を挙げる人もいます。つまり、教義の問題だけでなく、組織や人間関係への不信が特定の宗教を信じず、どこにも所属しない選択につながっていると考えられます。

さらに、インターネットの普及により、宗教の賛否や批判、別の価値観や生き方に関する情報へ日常的に触れやすくなりました。身近な共同体の影響だけで価値観が固定されにくくなった結果、疑問を持った人が離脱しやすい環境が整ったことの影響もあるでしょう。

3-3-4.日本人が知っておくべきこと

無宗教でも、神や高次の存在を信じる人は少なくありません。日本人も無宗教といいつつ、「初詣で神社へ行く」「厄払いをする」「受験や安全祈願のお守りを持つ」「先祖を敬う」といった行動は一般的です。

アメリカの無宗教も同様に、「所属しない」と「精神性や超越的なものを信じない」は別物です。宗教の話題では、無宗教=反宗教、無宗教=信仰がない、と決めつけず、相手が何を大切にしているかを本人の言葉で確認する姿勢が必要となります。

4.アメリカではホリデーシーズンの挨拶も変化

かつてアメリカでは12月~年末の挨拶として、「Merry Christmas!(よいクリスマスを)」というフレーズを使うのが一般的でした。
しかし、アメリカには色々な文化的ルーツを持つ人が集まっていること、12月には他の宗教のイベントもあることなどから、現在では「Happy Holidays!(すてきな休暇を)」が使われる機会が増えました。

クリスマスを季節イベントとして楽しんでいる日本では、気軽に Merry Christmasと言ってしまいますが、アメリカでは信仰上の理由からクリスマスを祝わない人、別の大事な行事を祝う人がいるので一般的な挨拶としては
Happy Holidaysを使った方が無難でしょう。

5.アメリカのクリスチャンも一枚岩ではない

アメリカのクリスチャンも一枚岩ではない

アメリカで最もメジャーな宗教はキリスト教ですが、ご存知の通り一言でクリスチャンといっても様々な宗派が存在します。

そしてアメリカにはアメリカ独自の宗教的コミュニティや文化があり、時には社会へ強い影響を持つこともあります。

5-1.大きな影響力を持つ福音派

アメリカのニュースでよく目にする「福音派(Evangelicals)」というフレーズ。
すごくおおざっぱに説明するとプロテスタントの中の保守層で、聖書の福音書を特に重視する保守的な価値観を持つ人々だとされています。
実はアメリカの政治・社会においてこの福音派は大きな影響力を持っています。

元々福音派はプロテスタントの中でも非主流派だったのですが、1976年の大統領選にジェームス・カーターに福音派が組織票を投じたことをきっかけに政治との距離が近づき、1980年にロビー活動が本格化。以降は共和党保守政策の支持基盤となってきました。

最初にアメリカは信教の自由と政教分離が理念の根幹にあることを説明しました。今もルールとしてはそうですし、この理念を大事に思っているアメリカ人はたくさんいます。
しかし、特に現代において実態はやや異なることを理解しておかねばなりません。

カトリックのアメリカ大統領は歴史上、ジョン・F・ケネディと現行のジョー・バイデンの2人だけで、キリスト教徒以外が大統領になったことはありません。

5-2.入植時の生活を守るアーミッシュ

アーミッシュとは、アメリカ入植時の生活を今でも守り続けているドイツやスイス系移民のコミュニティです。
キリスト教の教えを順守し、快楽や娯楽、身だしなみ、教育について厳しく制限する独自の戒律(オルドゥヌング)があり、農業を盛んに行っており近代以前の生活様式を守っているのが特徴です。
現代でも商用電源やガスを使わず、馬車で移動しています。

アメリカとカナダで約35万人ほどがアーミッシュとして暮らしていますが、時折現代社会との距離やコミュニティの閉鎖性が問題となることもあります。

5-3.キリスト教から派生したモルモン教

モルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)は、1830年に設立されたキリスト教をベースに三位一体を否定したり、モルモン書という独自の教義を持つ新宗教です。
近代以降に成立した新宗教の中では多くの信者を抱えており、アメリカ国内では600万人以上がモルモン教を信仰しています。

ユタ州のソルトレイクシティに本拠地を持ち、同エリアの住民の60%以上がモルモン教信者だとされています。
ユタ州についての情報はこちらでも詳しくご紹介しています。
ユタ州 ~アメリカ50州大解剖~

5-4.アメリカにも多い新興宗教

日本でも近現代に設立された新興宗教は多くありますが、アメリカにもたくさんあります。
特に多いのがキリスト教の教えに新たな解釈を加えた新宗教で、支持を拡大している教会も少なくありません。
こうした新宗教の中には、まれに過度にラディカルだったり差別的な思想を強要するところもあるので勧誘やトラブルには十分注意してください。

6.アメリカ生活で宗教について気を付けたいこと

アメリカ生活で宗教について気を付けたいこと

アメリカではキリスト教を信仰する人が多いですが、様々な文化的ルーツを持つ人たちが同じ場所で暮らしているため、生活する上で気を付けるべきポイントがあります。

6-1.無理に信仰を聞かない

信仰についての話題は非常にパーソナルな話題です。

親しい間柄であれば過度に遠慮する必要はないかもしれませんが、相手が信仰について話したがらない場合は無理に宗教的な話題について聞く事は避けましょう。

たとえば同じクリスチャンでも、オープンマインドな人もいれば、信仰は自分1人で大事にしたいと考える人もいます。
他人の信仰を同意なしに周囲に吹聴するアウティングもしてはいけません。

6-2.他者の信仰を揶揄しない

宗教や宗派、住んでいる地域によって、様々な文化やルールがあります。
日常的に宗教的儀式を行うことが少ない日本人にとっては、その宗派の決まりを理解できないことも多いでしょう。
軽いジョークのつもりでも、他人の信仰に関する習慣、食事、服装、考え方や信仰そのものについて否定したり、揶揄するようなことは絶対に行わないでください。

6-3.自らの信仰を押し付けない

他宗教の信者または無神論者に対して、自分の信仰を押し付けることもあってはなりません。
自分がその宗教を信じるように、他の誰かにとっては別の宗教や思想が信じるに値するものかもしれません。
異なる信仰を持つ人に対して、無理に勧誘するような行為は避けましょう。

6-4.勧誘はしっかりと断っても問題ない

アメリカに住んでいると教会のイベントや仏教のお祭りなど、色々なイベントに誘われる機会があります。
全てが宗教的勧誘というわけではありません。
地域の人や友人同士が楽しむためだったり、チャリティが目的だったりすることもあるので、そうした場合は信者でない人が参加して問題ないか確認して、行きたければ参加して問題ありません。

しかし、まれにかなり保守的な宗教観を持つ人や、勧誘を盛んに行っている新興宗教を信仰している人に強く誘われることがあります。
そうした場合は無理して付き合わず、しっかりと断って大丈夫です。

まとめ

アメリカで宗教は、日本やヨーロッパ各国と比べても重要なものと考えられることが多いです。
実際、国民の7割以上がなんらかの宗教を信じ、信仰によるアイデンティティを確立しています。
これからアメリカに住む人は、様々な価値観を持つ人と触れ合う機会もたくさんあるでしょう。

時には、驚くようなこともあったり、それによって困難を感じることもあるかもしれません。
しかし、色々な考えに触れて異文化を尊重することは、人間的成長をもたらしてくれるはずです。

アメリカ携帯ハナセルが運営する「アメリカ新生活・移住ブログ」では、本記事のように、アメリカでの生活や旅行で困ったときの解決方法や、アメリカに行く前に知っておきたい知識など、アメリカで役立つ様々な情報を発信しています。

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吉田店長の写真

監修者
ハナセル店長 吉田

モベルコミュニケーションズ取締役
アメリカ携帯電話業界に20年携わる専門家

小学生の頃に日本を離れた後、海外の大学に進学。海外携帯電話会社に入社し、現在も海外生活を続ける。
2007年、一時帰国の度に感動する日本品質のサービスを米国在住者にお届けしたいという想いから、日本人のためのアメリカ携帯サービス「HanaCell(ハナセル)」を立ち上げる。
コラムでは、一般の方にもわかりやすいアメリカ携帯電話に関する情報や、バイリンガルを活かしたアメリカ生活情報の発信・監修を行っている。

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